両神山⇒信仰の山は熊の出没する危険と隣り合わせだった(日本百名山8座目)

両神山の山頂
両神山(りょうがみさん)は標高1,723m。奥秩父で独特の山容を誇り、霊山として古くから信仰の対象となっていた。 表参道とされる日向大谷からの登山道がメインルートだが、一方で鎖場が連続する難所を魅力と感じる登山者には八丁峠を通るルートが選ばれるようだ。 今回はそのどちらでもない、白井差新道と呼ばれるルートを選択した。

キャンプ場、かと思ったら廃墟?

今回のルート選択の理由はただ一つ、痛みの続く膝をかばうために可能な限り短いルートを取りたかったからだ。白井差新道ルートはコースタイム5時間と、数ある両神山の登山ルートの中でも最も短いルートだ。 前日は大菩薩嶺に登ってきた。
大菩薩嶺(だいぼさつれい)は標高2,057m。奥秩父の、正面に富士山を望む絶景ポイントだ。 中里介山の小説『大菩薩峠』が有名なので、どちら...
午前中に登山を終え、車で両神山の登山口を目指す。 大菩薩嶺はコースタイムも短く標高差もあまりなかったため比較的楽に登ることができた。痛む膝には幸いだった。しかし、心配は続く。このあとコースタイムの長い甲武信ヶ岳が控えているからだ。 白井差新道ルートの登山口は、地図によると山中さんという民家の駐車場を利用するようだ。この駐車場は台数も限られていて、予約必須となっていた。しかし、何度電話してもつながらない。少し心配だったが、とりあえず行ってみることにした。 ナビを見ると、この山中さんのお宅への道すがらにキャンプ場が3箇所ある。そのうちの一つは、町営のオートキャンプ場だ。ここに宿営する予定で向かう。 ところが、ナビが示す場所に着いたら廃墟だった。 確かに「オートキャンプ場」という看板は掲げられてはいるものの、ベンチなどは朽ち果てて、水場の蛇口をひねっても水が出ない。トイレは利用可能だったが、炊事場は随分長い間利用した形跡がない。 隣りに民宿があったので確認しようと向かう。しかしどこから入ったらいいか分からない。ぐるりと一周してようやく入り口らしき場所を見つけたが、ノックしても声をかけても返答がない。ここも廃墟のようだ。 仕方ないので、とりあえずタープを張って場所取りをする。 念のため駐車場の山中さん宅に電話をかけようとするが、携帯電話の圏外。仕方ないので、車で行ってみることにした。

駐車場の山中さんが場所を提供してくれた

地図を見ながら、山中さん宅を目指す。それらしい家があった。 山中邸 何台もの車が出てくるところだった。どうやら、この日に両神山に登った登山客が帰るところだったらしい。 ちょうど、奥さんらしい人が車を誘導していた。声をかけ、事情を説明する。 ご主人が出てきて、明日の駐車許可をいただく。 ここで、この夜はキャンプ泊の予定であること、オートキャンプ場らしき場所があったが、誰もいなかったことを説明した。 するとその場所は山中さんの土地であり、もう10年以上前にキャンプ場は廃業したと知る。 さらに高知から来たことを話すと、山中さんのお宅の庭でテントを張らせてくれるという。 これは助かった。ご厚意に甘えることにした。 すでに廃墟と思われる場所にタープを張ってしまっていたので、いったん戻り、撤収する。山中さんのお宅までとって返し、さっそくタープを張る。 庭先でキャンプ

熊が出る!?

翌日は夜明けと共に登山開始の予定だというと、山中さんはいろいろ注意事項を教えてくれた。 その中で一番気になったのは、やはり熊の情報だ。 聞くところによると、今年になってから白井差新道ルートで2人の熊の被害があったとか。 冗談じゃない! さらになんと山中さんは、山岳救助隊のメンバーなのだとか。翌日は、連絡の途絶えた登山者の捜索に出るという。 どんだけ危険な山なんだ! 散々脅かされたあげく、ルート地図を手渡された。これを下山後に山中さんに返却することで安全に下山したことを確認するのだとか。 そこまでするか?? いやはや、肝をつぶした。 散々脅されたが、今夜は民家の庭先で寝られるという安心感は半端ない。前夜の峠の独り寝とは格段に安心感が違う。それもこれも、親切に庭先を貸していただいたおかげだ。 だが、予想外の展開に困ったことも。それが夕飯だ。 カレーパン キャンプ泊の予定が、庭先でのテント泊になった。さすがに焚き火をするわけにも行かない。せいぜいお湯をシングルバーナーで沸かすくらいしかできないので、急遽レトルトのハンバーグと道中の道の駅で買ってきたカレーパンでしのぐことに。カレーパンを買っておいて良かった・・・

気持ちのいい登山道

翌朝、5:00に起き出して朝食をとる。 朝食 この日は、スパゲティーだ。麺を3分湯がくだけでできるお手軽さがありがたい。しかもかなりおいしい。最近の食材は凄いね。 タープを張ったまま出発したかったが、この日は土曜日ということもあり駐車場をできるだけ確保する必要があるのだとか。びしょ濡れのタープをケースにそのまましまわざるを得なかった。ご厚意に甘えている身としては仕方ない。 トイレに行くと、まだ夜が明けるか明けないかというのに奥さんがトイレ掃除をされていた。このようなご苦労のおかげで、気持ちよく登山ができるのだ。本当に頭が下がる。 トイレ 7:00登山開始。完全に明るくなるのを待ってから出発した。そう、熊が怖かったからだ。 しばらくは林道を行く。 登山道 20分ほど歩くと、本格的な登山道となる。非常に整備されていて歩きやすい。 滝もあった。 昇竜の滝 わかりやすく気持ちのいい登山道が続く。 しかし熊の恐怖心はぬぐえない。 俺が朝一番の登山者であることは間違いが無い。当然、熊に遭遇する危険も一番大きいはずだ。熊よけに熊鈴もお借りしていたが、心配なので手持ちの笛を頻繁に吹きながら登った。 途中で別の登山者に抜かれる。少し話をしてみたら、同じ登山口を7:40に出たのだとか。随分とスピードが違うのに驚いた。コースタイムの2倍以上か?まあ、人それぞれ。と、自分に言い聞かせる(汗;)

山頂到着

9:40両神山に登頂。 両神山 コースタイム2:40ピッタリで登頂した。 山頂は少し紅葉していた。しかし後日テレビで両神山の紅葉を放送していたのを見たのだが、その美しさとは雲泥の差だった。もう2週間ほど遅かったらあの絶景を見られたのだと思うと、少し悔しい。 山頂で2度目の朝食をとる。山頂からは、富士山も見えた。 富士山 せっかくなので、両神神社にも参拝することにした。山頂からは、往復50分のコースタイムだ。 途中で帽子を落とすアクシデントがあったが、すぐに気がついた。取りに戻るのも大変なので、そのまま進む。途中で会った人に、もし見つけても拾わないようにお願いして歩いた。 10:20神社に到着。 両神神社 無事参拝を終え、下山にかかる。 参拝 帽子も途中で無事に拾うことができた。これも御利益かも知れない。

山の維持の難しさで盛り上がる

12:15山中さんのお宅に到着。ほぼ予定通りだ。 ご主人は不明者の捜索に出られていたので、奥さんに地図と熊鈴を返却する。駐車場利用時の約束の整備協力金1,000円も支払った。 お茶をいただく。 四方山話をしていると、山の維持の話になった。 山中さんはこのあたりの大地主で、この登山道も山中さんの私有地なのだとか。さらに最近の木材価格の低迷で、土地を持っていても全くお金にならず、維持費と固定資産税の重さに閉口しているとのこと。 これは俺と全く同じだ。 奥さんに、俺も高知で山を持っていること、杉山なので杉材の価格低迷で切り出すことさえできないことなどを話す。 秩父も高知も、山の問題は共通だ。政府の無策のせいで山は荒廃している。国土維持をどう考えているのか、もう一度政治家によく考えてもらいたいものだ。 なんでもかんでも国際競争に晒せばいいというものでもあるまい。コスト割れして山が放置されれば、登山道も荒廃する。たまたま山中さんは日本百名山ということで登山客から維持協力金を受け取れるが、そういうケースはごく一部。国際競争という美名の陰で、美しい国土が損なわれている現実を見るべきだろう。 そんな愚痴を並べて、思わず盛り上がってしまった。 奥さんにお礼を告げ、出発した。

甲武信ヶ岳登山口への険しい道のり

まずは温泉で汗を流す。この日は、道の駅の中にある薬師の湯だ。 薬師の湯 道の駅に温泉、うらやましい限りだ。 ここでランチもいただく。 照り焼き丼 照り焼き丼にした。米がおいしい。 ところが、ここからが険しかった。道が。 ナビの指示した道は、ヘアピン続きの細い道。高知でこうした道には慣れているつもりだったが、そんな俺でも閉口するほどだった。 ぶどう峠というところを通過する。眺めは良かったが、精神的に疲れた。 ぶどう峠 思いのほか遠く、ガソリン残量を気にしながらの運転となったので、精神衛生上良くなかった。 ようやく町まで下りてきた。しかし、コンビニがない。スーパーもない。今夜の食材をどうしようか、不安になる。 ようやくヤマザキショップを見つけ駆け込む。おじいちゃんとおばあちゃんが仲よく経営している店だった。ゆっくりした動作のおかげで、レジには行列。なぜか日本語のたどたどしい外国人が並んでいる。店頭の駐車場にも、外国人が座り込んでいた。工場か何かあるのだろうか。 17:00ようやく甲武信ヶ岳への登山口に到着。既に車がたくさん駐車していた。 この夜はここで車中泊。日の出と共に登山開始する予定だ。
甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)は甲州、武州、信州にまたがることから名付けられた。標高は2,475mで、信濃川、荒川、富士川の源流である。 眺望...
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